スペシャルインタビュー

ICTや思考ツールを活用し、先進的な学びを推進する 「つくば市立春日学園義務教育学校」

2016(平成28)年に新設された「義務教育学校」は、小中学校の組織が一体化して9年間を通した教育を行う。つくば市の中心部にある公立学校「つくば市立春日学園義務教育学校」もその一つだ。栗山賢司校長先生に、同校の取り組みやつくば市の魅力について伺った。

「つくば市立春日学園義務教育学校」
「つくば市立春日学園義務教育学校」

日常的な異学年交流を通して、未来と過去を見つめる

――学校の概要および教育方針について教えてください。

栗山校長先生:本校は2012(平成24)年に、つくば市内で初めての「施設一体型小中一貫校」として開校しました。そして2016(平成28)年には義務教育学校制度の開始に伴い、「つくば市立春日小学校・中学校」から「つくば市立春日学園義務教育学校」に移行し、今年で創立10年目を迎えます。現在はおよそ1,200名の児童・生徒数がいます。小学校6年間・中学校3年間の「6・3制」ではなく、前期(1~4年生)・中期(5~7年生)・後期(8~9年生)の「4・3・2制」を採用しています。これは、市内にある他3校の義務教育学校も同じです。 

 「つくば市立春日学園義務教育学校」栗山 賢司 校長先生
「つくば市立春日学園義務教育学校」栗山 賢司 校長先生

――「施設一体型小中一貫教育校」とはどういったものなのでしょうか。

栗山校長先生:施設一体型とは、小中学校の施設が同じ敷地内にある学校のことです。義務教育学校は、一人の校長の下で一つの教職員組織を置き、9年間の系統性を確保した教育課程を編成しています。本校は、基本的に小学校と中学校の棟は別で、渡り廊下で結ばれています。ただ、校庭、プール、体育館、図書室、被服室、調理室など共用スペースも多くあります。

渡り廊下でつながっている小学校と中学校の校舎
渡り廊下でつながっている小学校と中学校の校舎

――義務教育学校ならではの取り組みをお聞かせください

栗山校長先生:9年間の一貫した系統性・連続性のある教育課程を編成したり、異学年が日常的に交流できたりすることが大きな特長です。現在はコロナ禍で十分に実施できていませんが、1~9年生が混在したグループで「縦割り清掃」を行ったり、交流活動や合同授業なども行ったりしています。1年生のタブレット端末利用を4年生がサポートする、5年生が算数の練習問題を解くのを9年生がサポートする、といった交流活動も行っています。

縦割り清掃の様子
縦割り清掃の様子

行事も一緒にやることが多く、本校では避難訓練も学園全体で行っています。防災教育の一環として、今年度は9年生によるプレゼンもありました。今年度は修学旅行で宮城・福島方面を訪れ、震災から10年ということもあり、石巻市や南三陸町などの被災地も見学しました。

帰って来ると、修学旅行の実行委員や生徒会役員の生徒が私のところに来て、「9月に避難訓練をやりますよね。そのとき自分たちに15分位時間をいただけませんか。」と提案がありました。理由を聞くと、「これまで自分たちは、災害をどこか他人事としてとらえていた。みんなに課題意識を持ってもらうために、被災地で学んだことを下級生に伝えたい」と。そして自分たちで資料を作り、プレゼンを行ったんです。

被災地で学んだことをプレゼンする9年生
被災地で学んだことをプレゼンする9年生

一例にすぎませんが、こういったことが義務教育学校ならではのダイナミックな教育活動ではないかと思います。なお、コロナ禍ですので資料はタブレット端末で共有し、オンラインで行いました。

――そういった教育活動の効果については、どう感じていらっしゃいますか?

栗山校長先生:低学年の子どもたちは先輩の姿を見て「何年後かには自分もああやるんだ」と想像できますし、高学年の子は「自分もああだったんだな」と後輩をほほえましい気持ちで見ることができます。9年間というスパンで、展望と振り返りの両方ができることが、義務教育学校の良さだと思います。

いろいろな学年の子どもたちが一緒に登校して来る様子を見ていると、高学年の子が低学年の子に道を譲ったりして、みんな優しいんですよ。7~9年生の生徒がバスで総合体育大会などに出かけるときは、1年生が「頑張って来てねー!」と手を振って見送ったりして。本当に良い関係性です。

縦割り活動など異学年の交流は、高学年の子どもたちにとっては自己肯定感を高めるためにも有意義だと考えています。ここ2年間ほど十分にできていませんが、来年度こそ日常を取り戻し、義務教育学校ならではの活動に改めて力を入れたいと思っています。

異学年交流授業の様子
異学年交流授業の様子

ICT、思考ツール、筑波大学との連携などで、質の高い学びを提供

――つくば市で長く実施されている「ICT教育」について教えてください。また、どんなところにその効果を感じられますか?

栗山校長先生:竹園東小で日本初のコンピュータ教育を始めたのが1977(昭和52)年度なので、40年以上も前からICT教育に取り組んでいます。eラーニングシステムの導入や校内無線LANの整備などもいち早く行い、2015(平成27)年度には、市内すべての小中学校がJAET「学校情報化認定優良校」に認定されました。

現在まで一貫して変わらないのは、ICTを活用して個別学習の機会を作るということです。実際、1人1台端末の環境が整ったことで、個々の志向に応じた学びを推進できるようになってきたと感じています。例えば、一人ひとりに応じた学習活動、あるいは学習課題に取り組むといった、いわゆる学習の個性化を図ることができます。電子黒板でみんなの考えを簡単に共有できるようになったのも大きな利点でしょう。手を上げて積極的に発言する子だけでなく、友達すべての意見も知ることができ、互いに「こんな考え方もあるんだ」と知ることができますから。

1人1台の端末を使用して学習する
1人1台の端末を使用して学習する

その場で学習上のつまずきに気付き、フォローできるのも特長です。以前は、一コマの授業の中で、一人ひとりの学習定着度を確認し、理解できていない子がどこでつまずいたか把握するのは困難でした。でも、いまは回答にかかった時間などを即座に分析できるので、教員がすぐに対応できるんです。証明問題などの回答にはまだ対応できませんが、選択式の問題なら、選択肢の回答状況を確認して、こんな風に勘違いしている子が多いんだ、と分かることもあります。

一人ひとりの学習定着度を確認できるICT教育
一人ひとりの学習定着度を確認できるICT教育

――重点目標の一つである「論理的思考力の育成」のために、どんな取り組みをされていますか?

栗山校長先生:1年生~6年生には、月1回「考える時間」を設けています。思考力、判断力、表現力等を育成するために必要とする力を「分類する」「比較する」といったスキルに分け、各スキルに対応する思考ツールを用いて、考える力を磨きます。

例えば「秋」をテーマにした作文に、「関連付ける」という思考スキルで取り組むとします。対応する思考ツールは「イメージマップ」です。まず真ん中に「秋」という字を書き、周りに連想する言葉を書いて線で結んでいきます。「紅葉」「稲刈り」「栗」とか。そして「紅葉」からさらに「赤」「旅行」といった具合にイメージを広げていきます。そうやって秋についての自分のイメージが見えて来たら、その中から最も関心のあることを作文にするわけです。

よく教員は「〇〇について考えましょう」と言いますが、一口に「考える」といっても、いろいろなアプローチがありますよね。順序立てて考えたり、理由付けて考えたり。そこで、思考の過程を可視化できるよう、思考ツールを取り入れたんです。筋道立てて説明できる力を養えますし、他の子の考え方を知ることもできます。

きれいに整備された校舎
きれいに整備された校舎

――市内の研究所や民間企業、筑波大学と連携した、外部講師による出張授業もあると聞きます。どんな事例がありますか?

栗山校長先生:子どもたちは教科等の学習の中で各研究機関等とオンラインで結んで課題解決を図ったりしています。その他にも、例えば、近くの筑波大学と連携して「運動器検診」を行っています。運動器というのは骨や筋肉、靭帯などですね。成長期の子どもの身体は大人とは違うので、専門の先生に診ていただけるのは安心です。

また、日本スポーツ協会公認のアスレティックトレーナーの方には、運動部の活動に大きく関わっていただいています。それぞれの部活動に特化したウォーミングアップ法、ケガ予防のためのトレーニング法、適切な応急手当や冷却方法などを教えてもらっています。教育活動の礎は安全・安心なので、本当にありがたいですね。

子どもたちが定めた「春日学園憲章」が、日々の生活目標

――春日らしい美しく誇りある生活スタイル「春日スタイル」について、どんな経緯で生まれ、どんな内容なのかお聞かせください。

栗山校長先生:創立時から本校には「春日学園 輝く明日へ!」というスローガンだけがあり、いわゆる校訓がありません。そこで児童・生徒会が中心となって「輝く明日」とは何か話し合い、自主的に「春日学園憲章」を制定しました。「支え合って、共に伸びていこう」「勇気をもって、正しく行動しよう」「創意をもって、成し遂げよう」というもので、いわば子どもたちの決意表明です。これに則って作られたのが「春日スタイル」で、挨拶や言葉遣いなど具体的な生活の手引きとなっています。

「春日スタイル」活動の一部
「春日スタイル」活動の一部

やはり、教員が決めたものではないという点が大きいのでしょう。注意するとき、教員は「学校のスローガンって何だっけ?」と目標に立ち返らせます。すると、子どもたちは素直に受け止められるようです。なお、校内でのスマホ利用禁止など、教員が示した「春日の約束」という最低限のルールは設けています。

――春日学園PTA図書サポーターは、どういった活動をされているのでしょうか。子どもたちの反応についてもお聞かせください。

栗山校長先生:保護者の方々によるボランティア活動で、1~6年生の各クラスで1カ月に1回程度、学年や季節に合った絵本や童話の読み聞かせをしてくださっています。身を乗り出して聞き入っている子、読み聞かせが終わった後も物語の余韻に浸っている子、サポーターの方に駆け寄って質問する子など、生き生きと楽しんでいる子どもたちの姿が印象的です。

絵本や童話の読み聞かせを行う「図書サポーター」
絵本や童話の読み聞かせを行う「図書サポーター」

5~6年生のクラスでは年に2~4回程度、「ブックトーク」といって毎回テーマに沿った本を何冊か紹介していただいています。また、各学級に20~30冊くらい本を配置し、年に3回入れ替えてくださっています。これらの本は、図書サポーター各自が市の図書館から借りているものに加え、図書サポーターの方々の所蔵するもの、PTAの図書予算費で購入したものなどでまかなっています。また、図書室のコマーシャルボードも素晴らしい取り組みだと思います。本の紹介文を模造紙に書いたものですが、壁一面に掲示されていて目を引きます。

図書室のコマーシャルボード(本の紹介)
図書室のコマーシャルボード(本の紹介)

洗練された街と豊かな自然 変化に富んだつくば市

――地域と連携して行っていることがあれば教えてください。

栗山校長先生:すぐ近くの「吾妻学園」で行われている「吾妻まつり」には、春日学園の子どもたちも毎年参加しています。吾妻地区と春日地区合同の地域のお祭りで、中心になって運営される地域の方々に学校が協力している形です。つくば市は、他所から移住してきた人たちがたくさん住んでいます。そこで40年ほど前、吾妻小学校に通う児童の保護者が「子どもたちにふるさとの思い出を作ってあげたい」という想いで始めたと聞いています。今年度はバーチャル開催となりましたが、「今年はみんなユーチューバー」を合言葉にみんな楽しんでいました。

広々とした校庭
広々とした校庭

――つくばエリアの魅力をお聞かせください。

栗山校長先生:駅周辺には洗練された街の雰囲気があり、少し足をのばせば豊かな自然があります。そういった変化に富んだところが魅力だと思います。つくば市の中心部は遊歩道で結ばれていて、安全に散歩できるところもいいですね。なんとなく大学のキャンパスのような感じがします。小さなお子さんがいる方も安心して移動できるでしょうし、ところどころに大きな公園があるので、遊んだり四季の変化を楽しんだりすることもできます。

個人的に好きな場所は、関東平野が一望できる筑波山です。大パノラマを楽しめて、関東が広い平地であることを実感できます。夜は、日本夜景遺産にも登録されている夜景を楽しめますし、冬は空気が澄んで美しい星空を眺められますよ。

つくば市立春日学園義務教育学校
つくば市立春日学園義務教育学校

つくば市立春日学園義務教育学校
栗山 賢司 校長先生

所在地 :茨城県つくば市春日2-47
電話番号:029-856-3110
URL:https://www.tsukuba.ed.jp/~kasuga/
※この情報は2022(令和4)年2月時点のものです。