スペシャルインタビュー

地域に根差した学びとともに、英語とICTで世界にはばたく子どもを育成する「笠間市立友部第二小学校」

2020(令和2)年度の「かさましこ~兄弟産地が紡ぐ“焼き物語”~」の日本遺産認定により、笠間焼や地域の暮らしなどあらためて注目が集まっている茨城県笠間市。世界で活躍できるグローバルな視点を持ち、地域とつながりローカルを支える“グローカル人材”の育成に取り組む独自の教育も興味深く、子どもを持つご家庭にとっては注目すべき地域のひとつ。

今回は持丸正美校長先生を訪ね、「笠間市立友部第二小学校」の概要や特色ある取り組み、地域とのつながりについてお話を伺った。

「笠間市立友部第二小学校」校長 持丸正美 先生
「笠間市立友部第二小学校」校長 持丸正美 先生

1980(昭和55)年に創立した「笠間市立友部第二小学校

――学校の歴史や現在の学校の概要についてご紹介ください。

持丸先生 「笠間市立友部第二小学校」は1980(昭和55)年の創立で、歩いて15分ほどの距離にある「友部小学校」の学区の人口増加に伴って新設された学校です。2022(令和4)年4月1日現在の児童数は539名で、通常学級16学級と特別支援5学級で運営しています。

児童数の推移としては市内で唯一増加傾向にある学校で、ピークを迎える2025(令和7)年度あたりまで増え続ける見込みです。周辺の住宅地の開発によって発展してきた地域ですが、現在も住宅の分譲等が行われているようです。

メタセコイアの木が植えられた校庭
メタセコイアの木が植えられた校庭

学校の特色としては、校庭に大きなメタセコイアの木が植えられており、秋になると見事な紅葉を楽しむことができます。

あいさつ・返事・笑顔と感謝を大切にして、楽しい学校づくりを

――学校の教育目標や力を入れて取り組んでいる活動などについてお聞かせください。

持丸先生 本校のHPに学校経営のグランドデザインを掲載しておりますが、友部地区の小中一貫教育の取り組みについて盛り込んでいます。

“「ともべ」を愛し、新しい「ともべ」をつくる”をスローガンに、「と:ともに学び、郷土を愛する子」、「も:もちまえを見つけ、発揮できる子」、「べ:ベストを尽くし、がんばる子」の育成を目指します。また小中9年間の学びを通して子どもにたちに身につけさせたい力についても共有し、中学校2校と小学校5校が連携して小中一貫教育を進めています。

校内に掲示されている学校経営目標 〜あいさつ 返事 笑顔と感謝〜
校内に掲示されている学校経営目標 〜あいさつ 返事 笑顔と感謝〜

もう一点、学校経営目標に“「明日の待たれる楽しい学校づくり」〜あいさつ 返事 笑顔と感謝〜”とありますが、コロナ禍で常にマスクを着用することが求められ、おたがいの表情や気持ちが伝わりづらく、子どもたちも人とのつながりや学校生活における喜びといったものを感じづらい状況にあったように思います。

地域の方からもあいさつの声が小さくなったと心配する声をいただきましたが、大きな声を出してはいけないといった風潮もあり、いつしか子どもたちもあいさつすることや笑顔で気持ちを伝える機会が少なくなってしまっていたのではないかと思います。

そこで今年度は「あいさつ・返事・笑顔と感謝を大切にして、楽しい学校にしていきましょう」と子どもたちに伝えています。登下校時、暑い時はマスクをはずしても良いことになりましたし、少しずつ元の生活に戻って来てはいるのですが、声を出すのを遠慮している子には会釈だけでも相手に気持ちが伝わるよと話しています。毎朝子どもたちの様子を見ていると、顔を見て会釈をしてくれる子どもも増えましたし、コロナ禍に応じた生活ができるようになっているのかなと思います。

交通安全ボランティアによる見守り活動
交通安全ボランティアによる見守り活動

英語教育やICT教育にも力を入れ、笠間市が目指す教育を実践

――教育活動において力を入れていることについてお聞かせください。

持丸先生 これは本校に限ったことではなく笠間市全体の取り組みですが、AET(英語指導助手)の先生が各校に1名ずつ配置され、充実した英語教育を実践しています。

またICTについても1人1台タブレット端末が配付され、2021(令和3)年度から本格的な授業がスタートしました。笠間市では1年生から日常的にタブレット端末を使うようにしています。各教室には大型の電子黒板もあり、ICT教育にも力を入れて取り組んでいます。

大型の電子黒板が設置され、ICT教育が推進されている
大型の電子黒板が設置され、ICT教育が推進されている

タブレット端末の運用に関しては、導入当時から自宅に持ち帰れるようにしているのが特徴です。当初は使い方も含めてしっかりと教育をしないとネット上のトラブルなどに巻き込まれる危険性があるのでは、という議論もありましたが、ご家庭と連携しながら使い方を学んでいくこともこれからの教育には必要だろうと持ち帰りを前提とした運用にしています。

平和教育活動の様子
平和教育活動の様子

学校から徒歩5分の「筑波海軍航空隊記念館」を通して平和について学ぶ

――地域の特色を生かした教育活動についてお聞かせください。

持丸先生 地域の特色を生かした取り組みは数多くありますが、ひとつは「平和教育」が挙げられます。本校から歩いて5分のところに「筑波海軍航空隊記念館」という施設がありまして、1年生から6年生まで独自のカリキュラムを用意して学習に生かしています。

笠間市には小中9年間を通してグローカル(グローバルとローカルを合わせた造語)な人材を育成する「笠間志学」という指導マニュアルがあり、そこにも「筑波海軍航空隊記念館」について学ぶことが盛り込まれています。

「笠間志学」という独自の指導マニュアルがある
「笠間志学」という独自の指導マニュアルがある

筑波海軍航空隊は1934(昭和9)年、戦闘機などの操縦訓練を行う海軍の練習航空隊として開隊されました。 太平洋戦争末期には、特別攻撃隊も編制され、「特攻」の訓練も行われました。終戦とともに同隊は解隊されましたが、 敷地内にあった司令部庁舎は戦後も残り、様々な形で現在まで活用されてきました。

「陶炎祭」やスナッグゴルフなど、地元イベントへの参加やスポーツを通した交流

――笠間といえば笠間焼が有名ですが、地域性を生かした教育活動は他にございますか?

持丸先生 そうですね、毎年5月に行われる「陶炎祭(ひまつり)」というイベントで「小学生土面フェスティバル」という企画があり、市内11小学校から数多くの作品が出品されます。毎年5年生のときに土面を制作して、6年生になったときに出品されるのですが、本校は6年生2名の作品が「ひまつり賞」に選ばれました。

また笠間市はスナッグゴルフが有名で、「宍戸ヒルズカントリークラブ」さんのコースをお借りして市内11小学校(10小学校、1義務教育学校)からそれぞれ代表者が集まり競技を行います。笠間市出身の女子プロゴルファー畑岡奈紗さんもスナッグゴルフがきっかけでゴルフを始めたそうです。

「水戸ホーリーホック」による英語学習を取り入れたサッカー指導
「水戸ホーリーホック」による英語学習を取り入れたサッカー指導

地域性を生かした取り組みは他にも、J2の「水戸ホーリーホック」の山口瑠伊選手が来校し、英語学習を取り入れたサッカーの指導をしてくださいました。また昨年度はスポーツを通して国際交流などに取り組むラグビーの徳増浩司さんが来校し、子どもたちにタグラグビーを指導してくださいました。学校現場としては第一線で活躍されている方のお話は大変貴重で、子どもたちにとっても良い経験になっていると思います。

学校運営協議会の協力により実現した立派な鯉のぼり

――保護者や地域の方との連携によって実施されている取り組みがあればお聞かせください。

持丸先生 2021(令和3)年度に学校運営協議会が設置されて、本校もコミュニティスクールとしての運営がスタートしております。笠間市では今年度の取り組みのひとつに、季節ごとの日本の行事を大切にしようという提案があり、第1弾として市内全ての小学校に鯉のぼりをあげようといったプロジェクトがありました。

地域から寄贈された鯉のぼり
地域から寄贈された鯉のぼり

当初は掲揚ポールに1匹あげるものかと思っていたのですが、学校運営協議会にお話ししたところそれでは寂しいだろうと。知り合いの方を通じて立派な鯉のぼりを寄贈していただき、13匹もの立派な鯉のぼりを子どもたちに披露することができました。

また第2弾となる7月の七夕には、学校運営協議会の方が竹を集めてくださって、各学年の廊下に設置してくださいました。学校運営に迷惑がかからないようにとわざわざ休日に集まってくださって、月曜日に登校した児童たちは見事な竹を見てびっくりしていました。

地域の方の協力により、子どもたちにとって貴重な体験となる、さまざまな取り組みが行われている
地域の方の協力により、子どもたちにとって貴重な体験となる、さまざまな取り組みが行われている

今はちょうど昇降口のところにお月見の飾りがありますが、こちらも学校運営協議会の方によるもので、日本の伝統や文化を大切にする心が子どもたちにも伝わっていると思います。

学校運営協議会の方により用意された、お月見の飾り
学校運営協議会の方により用意された、お月見の飾り

保護者や地域の方とのつながりは他にも、家庭科のミシンのお手伝いやまち探検に出かけるときのサポート、通称オレンジさんと呼ばれる交通安全ボランティアの方など、様々な場面で学校運営を支えていただいています。

また最近の話題としては、学校運営協議会の協力により9月1日から新しい通学路を通行できるようになりました。今までは大通りを通って通学していたのですが、歩道に余裕が無く危険だということで、学校運営協議会や区長さんが市に働きかけてくださって舗装工事をしてもらいました。学校だよりでも紹介させていただきましたが、非常にありがたいことだと思っています。

中学校の生徒さんたちと一緒に行う「あいさつ運動」

――友部地区の小中一貫教育の現状についてお聞かせください。

持丸先生 グランドデザインのところでも触れましたが、友部地区には「友部中学校」と「友部第二中学校」の2つの中学校があり、本校の卒業生は8、9割が「友部第二中学校」に進学し、残りの1、2割は「友部中学校」に進学します。

そのため進学先によって学校の方針が大きく異なると子どもたちにとっても負担が大きくなってしまうので、友部地区の学校がそれぞれ情報共有を行い、中1ギャップの解消に向けた取り組みを進めています。具体的には校長、教頭、教務主任のネットワークがあり、それぞれ情報交換や協議を重ねています。

一方、子どもたちは「あいさつ運動」という活動を行っています。「友部第二中学校」の生徒さんたちが母校に足を運んでくれて一緒にあいさつ運動をしてくれます。

「筑波海軍航空隊記念館」の展示物を校舎内に展示。「平和教育」に生かす貴重な取り組み

――今後あらたに予定されている取り組みや注目すべき活動などがございましたら教えてください。

持丸先生 先ほど地域の特色を生かした教育活動として「平和教育」について触れましたが、今年度から「筑波海軍航空隊記念館」の展示物を一部お借りして、本校の校舎内で展示させていただくことになりました。戦闘機の搭乗員が着る飛行服やブーツなど、記念館に保管されていたものを間近に見ることができます。

地域を知る郷土教育の一環として「平和教育」を進めていく中で、大変貴重な展示となり、本校が取り組む教育活動の特色のひとつになると思っています。

「筑波海軍航空隊記念館」にあった展示物の一部
「筑波海軍航空隊記念館」にあった展示物の一部

また、笠間市には「茨城県陶芸美術館」があり、施設の一画をお借りして笠間市児童生徒美術展覧会を開催できるのは素晴らしいことだと思っています。

美術館が無かった頃は学校の持ち回りで体育館などに子どもたちの作品を展示していたのですが、「陶芸美術館」のような立派な県の施設に自分の作品が展示されるというのは子どもたちにとっても貴重な経験ですし、誇りに感じられることだと思います。

自然環境の豊かさをはじめ、歴史や伝統、芸術に触れられる街

――笠間市の魅力また学校周辺の生活環境の魅力についてお聞かせください。

持丸先生 笠間市は自然環境の豊かさもそうですが、「笠間焼」や「笠間稲荷神社」など、歴史や伝統、芸術に触れられることが魅力だと思います。市内には「茨城県陶芸美術館」もありますし、教員が集まる「茨城県教育研修センター」や「茨城県立中央病院」など、県の中枢を担う機関や施設が多くあります。

昔の街並みといえば笠間市の市街地になるでしょうし、田園風景といえば旧岩間町。旧友部町には「北山公園」があって自然に触れられます。

遊具や池などもある「北山公園」
遊具や池などもある「北山公園」

生活環境としては、JR「友部」駅に常磐線と水戸線の2路線が乗り入れるので交通の利便性に優れていると思います。特急の停車駅になっているのも大きいと思います。また北関東道の「友部」ICが近くにあるので車でのお出かけもしやすいですし、大洗まで30分、宇都宮にも1時間ほどで行くことができます。

「道の駅かさま」がオープンしてちょうど1年になりました。栗が有名な笠間は、豊かな自然と文化が息づく住みやすい街です。

茨城県笠間市・「笠間市立友部第二小学校」
茨城県笠間市・「笠間市立友部第二小学校」

笠間市立友部第二小学校

校長 持丸 正美先生
所在地:茨城県笠間市平町1718-93
電話番号:0296-77-7946
URL:https://www.ed.city.kasama.ibaraki.jp/page/dir000008.html
※この情報は2022(令和4)年9月時点のものです。