スペシャルインタビュー

大切にしてきた個とはらからの精神「茨城大学教育学部附属小学校」

国立大学の教育学部附属小学校ならではの使命として、先進的な取り組みをしてきた「茨城大学教育学部附属小学校」。同校は1974(昭和49)年に設置された「総合活動の時間」や、宿泊学習を含めたより濃密な「異年齢交流」を実践してきました。こうした新しいことに対する積極的な姿勢は、コロナ禍におけるオンライン授業へのスムーズな転換にも後押しとなっています。今回は同校を訪れ、受け継がれてきた伝統と、新しいことへの取り組みについて渡部校長先生にお話を伺ってきました。

渡部 玲二郎校長先生
渡部 玲二郎校長先生

附属小学校としての使命

――まずは、「茨城大学教育学部附属小学校」の概要から聞かせてください。

渡部校長先生:本校は、「茨城大学教育学部附属水城小学校」と「同附属愛宕小学校」を統合して1958(昭和33)年に発足しました。教育理念には、よりよい関わり合いのなかで個性や能力を高め、子どもたちの自立心を養うため“個の確立とはらからの精神の両立”を掲げています。

「はらから」の像
「はらから」の像

はらからの精神の“はらから”とは同胞や仲間のことで、つまり全学年を対象とした縦割り班での活動を意味します。清掃、休み時間、運動会といったさまざまな場面で活動し、4年生以上は「夏の総合活動」として宿泊学習もあります。6年生はリーダーとしての心構えを、5年生はサブリーダーとしての経験を積むいい機会となっています。全国的にも縦割り班というのは珍しいことではないのですが、本校の宿泊学習のように大きな規模で行事を実施している学校は限られていると思います。

校舎一階の中央にあるステンドグラス
校舎一階の中央にあるステンドグラス

――茨城大学教育学部の附属小学校としての特徴はどのようなものがありますか?

渡部校長先生:本校での先進的な取組みは、その研究成果が市内、県内、全国の小学校にもフィードバックされることになります。そうした取組みの代表格が、1974(昭和49)年に設置した「総合活動の時間」と言えるかもしれません。その4年後には「総合学習」に名称を変え、身近な生活環境・自然環境・社会環境と関わりながら、総合的な判断力や学びへの意欲、さらには生きる力を育んでもらうために設置しました。1998(平成10)年に「総合的な学習の時間」が導入される20年以上も前から、その先がけとも言える取組みをしてきたことになります。

体育的な要素と、文化的な要素をもつ「キッズワールド」のオリジナルキャラクター
体育的な要素と、文化的な要素をもつ「キッズワールド」のオリジナルキャラクター

――それ以外の特徴的な取組みがあれば教えてください。

渡部校長先生:ひとつは高学年対象の「クラブ活動」です。既存のクラブに入るというのではなく、子どもたちに参加したいクラブのアンケートを取ってから決めることになっています。また、委員会活動である「いちょう活動」についても子どもたちの自主性を大切にしています。毎年3月末になると5年生は、学校活動にどのような委員会が必要かを考え、それが決まった段階で、4年生に一緒に活動しようと声がけをします。子どもたちが自分たちで考え、主体的に取組むことが大切と考えています。

中庭
中庭

――特徴的な取組みをされてきたなかで、これまで実感された効果はありますか?

渡部校長先生:「はらから活動」に代表されるように、本校は異年齢交流に注力してきました。ある研究によれば、異年齢交流は年上の子どもたちの自制心と自己肯定感を育むという結果が出ており、それについて私も頷く場面が何度もありました。反対の立場である年下の子どもたちにとっても、年上の存在がフォローしてくれる安心感から困難なことに向き合う気持ちが生まれやすくなります。

広々とした舗装運動場
広々とした舗装運動場

社会情勢の変化にともなって

――コロナ禍での工夫や、新しく取り組まれたことはありますか?

渡部校長先生:本校に限った話ではないですが、緊急事態宣言の発出中にオンライン授業を導入しました。1年目に関して言えば、なかなか効率的な運用はできなかったのですが、各教員の対応力が高かったこともあり、結果として保護者からのアンケートではとてもいい評価をいただくこととなりました。

緑豊かな「茨城大学教育学部附属小学校」
緑豊かな「茨城大学教育学部附属小学校」

それ以外では、2年生が対象の「電車でGO!」という行事にも変化がありました。これは電車に乗って各地域の学校を訪問して交流を図るというものですが、コロナ禍でそれが難しくなったことからオンラインで実施しました。これまで電車で移動していたため、交流できる範囲に制限がありましたが、オンラインに切り替えたことによってそれがなくなり、交流範囲が広がりました。

教室
教室

――隣接する附属幼稚園との連携があれば聞かせてください。

渡部校長先生:異年齢活動の一環として「おあいてさん」というものがあります。これは1年生と在園児がペアをつくり、入学してくる新入生の世話をするというものです。また、6年生は卒業していく立場からの交流を新1年生と図るなど、学年に応じた交流をしています。

第53回卒業生制作「ばらのしるし」
第53回卒業生制作「ばらのしるし」

――地域や他機関との連携についてはいかがでしょうか。

渡部校長先生:教育は理論だけでなく実際の現場を知ることが大切と考えています。茨城大学教育学部を本校の教員が訪ね、学生に話をすることもありますし、研究授業のために他校を訪問することもあります。

式典などが行われる体育館
式典などが行われる体育館

――最後になりますが、貴校周辺の三の丸エリアや水戸南町についてどのような印象を持たれていますか?

渡部校長先生:本校を含め周辺は、江戸時代後期に設立された藩校「弘道館」をはじめ、その旧敷地内に校舎がある「水戸市立三の丸小学校」、さらには「水戸市立第二中学校」、「茨城県立水戸第一高等学校」があるなど県内屈指の文教エリアです。いずれも徳川御三家のひとつ、水戸徳川家の居城であった旧・水戸城内にあるなど歴史の重みがある区域となっています。

ガラス張りの明るい昇降口
ガラス張りの明るい昇降口

また南町についても、調べれば調べるほど興味深い街です。私は以前別の街で暮らしていたのですが、そこから水戸に移ってきたときは歴史がある街ならではの安定感、また安心感に似たような感慨をいだきました。近くには「偕楽園」、「千波湖」、また旧・茨城県議会議事堂を改修した「図書館」があり、濃密な歴史を底流とするがゆえの雰囲気が魅力と感じます。子どもたちには自分たちが住んでいる街の歴史に興味を持ってもらいたい――その役割を学校が担えればと思っています。

校長 渡部 玲二郎先生
校長 渡部 玲二郎先生

茨城大学教育学部附属小学校

校長 渡部 玲二郎先生
所在地:茨城県水戸市三の丸2-6-8
電話番号:029-231-2831
URL:http://www.esch.ibaraki.ac.jp/
※この情報は2022(令和4)年3月時点のものです。

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