スペシャルインタビュー

弘道館の精神を受け継ぎながら、子どもの可能性を広げる学びを行う「水戸市立三の丸小学校」

「水戸市立三の丸小学校」は、徳川御三家のひとつ水戸徳川家の藩校「弘道館」旧敷地内にあり、「弘道館」より受け継いだ伝統が底流にある小学校です。実践的で、有為な人材の育成を目的とした「弘道館」の精神は、令和の時代になっても受け継がれ、全国さらには世界へと羽ばたいていった卒業生が新たな伝統を築き続けています。今回は、同校ならではの特色や力を入れている取り組みについて伺ってきました。

2022(令和4)年3月まで同校校長を務めた大塚昌弘校長先生
2022(令和4)年3月まで同校校長を務めた大塚昌弘校長先生

水戸の歴史がここにある

――まずは「水戸市立三の丸小学校」の歴史、また概要について聞かせください。

本校は1892(明治25)年10月、「水戸市高等小学校」として開校しました。以来、明治・大正・昭和・令和と時代が移り変わるなかで、水戸における教育・文化の中心として地域とともに歩んできました。本校があるのは江戸時代に屈指の規模だった水戸徳川家の藩校「弘道館」の医学館・天文台の跡地です。白壁を挟んで「弘道館」があり、武家屋敷を思わせる冠木門や白壁造りの校舎は景観としてもよく調和しています。

「弘道館」の創立の精神である“天下の魁”は、大きく変貌を遂げる現代社会においても不易な教えとして、本校に脈々と受け継がれていると感じます。特に「弘道館記」にある“文武不岐”の精神は、現代でいうところの知育・徳育・体育のいわゆる“バランスのよい人材育成”に、また、“衆思を集めて群力を宣ぶ”の精神は、学習指導要領の“対話的で深い学び”に通じます。

校内に飾られた「弘道館之図」
校内に飾られた「弘道館之図」

NHKの大河ドラマ「青天を衝け」で、「弘道館」の核となる水戸学が紹介されました。“歴史を明らかにして未来を考える”を基本理念とする実践性・先見性・広い視野は、今日でも水戸教学として学校教育に生かされています。こうした「弘道館」の教育精神を踏まえた上で、本校は“よく学ぶ・よく遊ぶ・よく働く”を教育理念とし、学びが生きること、そして働く力となる教育を推進しています。

めざす児童像が書かれている
めざす児童像が書かれている

――学校活動では、どのような分野に力をいれていますか?

子どもたちの可能性を広げるため、教科の学習だけでなく芸術、文化、スポーツなど様々な分野に力を入れています。研究作品、作文、図工、家庭科といった幅広い分野で入賞する児童が多いのはそういった取り組みの成果と言えるかもしれません。また、本校の吹奏楽部は、昨年夏に行われた茨城県吹奏楽コンクールで第1位となり、東関東大会にも出場し金賞を獲得しました。卒業生には「東京2020オリンピック」に出場したプロゴルファー・星野陸也選手もおり、卒業文集の将来の夢について“プロゴルファーになる”と書いています。

また、本校の特徴的な教育活動についてお話いたしますと、隣接する「弘道館」での授業があげられます。実際に見るだけでなく、自分で調べることで歴史や文化に対する興味がわき、より詳しく調べてみようという子どもも出てきます。こうした“天下の魁”の地で学べることが、愛校心を高めることにつながっているのではないかと思います。

趣のある「水戸市立三の丸小学校」
趣のある「水戸市立三の丸小学校」

――授業の進め方や指導について、どのようなところを大切にされているのでしょうか。

多様性を受け入れた上で思考し、より深まった自分の考えを上手にわかりやすく表現・発信できるようにすることを目標としています。その実践のために、“かかわり 学び 伝え合う 活動の工夫”を掲げ、教職員の共通理解・協働体制・共通実践のもとで、チーム三の丸として総力を挙げ、教育活動の改善・充実に取り組んでいます。

――コロナ禍での工夫、また新たに取り組まれたことはありますか?

コロナ禍で多くの活動が制限されましたが、これまでの活動を見つめ直すよい機会になったと感じています。そのひとつが、オンラインによる全校朝会です。移動時間がなくなっただけでなく、映像を用いることでより分かりやすい説明ができるようになりました。

数々のコンクールなどの受賞盾やトロフィー
数々のコンクールなどの受賞盾やトロフィー

運動会に関しては三密を避けるため、低学年・中学年・高学年ごとに実施しました。効率よく参観できるということで保護者からも好意的な意見をいただいています。一方の卒業式では、歌や呼びかけはできなかったものの、映像を活用することでこれまでとは異なる演出ができました。

また保護者や地域の方が、消毒、清掃のボランティア活動に参加してくれるようになりました。コロナ禍が収束した暁には、地域の教育的資源を生かした授業が展開できるのではないかと思います。

――タブレット学習についてですが、内容や工夫されていることを聞かせてください。

今年度は2回の一斉休校があり、その期間はオンライン授業で対応しました。また、諸事情で登校できない児童にとっても、新しい学びの手段となっています。タブレットを活用することで一人一人の考えを生かせるようになり、本当の“全員参加”の授業ができるようになりました。今年度は“教育のICT元年”と言われていますが、まさにその通りだと感じています。

木のぬくもりが感じられる校内
木のぬくもりが感じられる校内

――体育館をリニューアルされたそうですね。

外観の美しさはもちろんですが、子どもたちの足にやさしいクッション性のある床に貼り替えを行いました。半年近く使用できなかった分、子どもたちには存分に利用してもらえたらと思います。3月18日には卒業式が開かれ、装いを新たにした体育館から卒業生は羽ばたいていきました。

保護者・地域との共生

――地域との交流や、連携している活動などありましたら聞かせください。

本校は伝統的に“保護者や地域との共生”を重視しています。保護者や三の丸自治コミュニティ連合会との連携・協力により、様々な活動が展開されています。地域との交流に関して言えば、市内の自然豊かな国田地区の「国田義務教育学校」と同地域の方との農業体験活動があります。田植え、稲刈り、芋の苗植え、秋になれば収穫祭も行います。こうした日常では経験できないこととの触れ合いは、街に暮らす本校の児童にとっては貴重な体験学習となっています。今後も地域との関わりを大切にし、地域情報の共有化をはじめ、学校の情報公開などを通してともに歩んでいく学校づくりに邁進していきたいですね。

階段も学びの一つの場に
階段も学びの一つの場に

――近隣の保育所、幼稚園、または進級先の中学校との連携はいかがでしょうか。

本校は幼保小連携に力を入れており、「杉山保育所」や「茨城大学教育学部附属幼稚園」などと連携し、先生同士の研修を継続的に行っています。中学校との連携については、水戸市では小中一貫教育を推進しており、本校の進学先である「水戸市立第二中学校」と連携して9年間を見据えた教育を行っています。どのように育ってほしいかを小中の先生同士で話し合い、その目指す方向性に即した教育をしています。保育所・幼稚園から小学校、中学校まで切れ目のない教育が大切です。

美しい屋根瓦の校舎
美しい屋根瓦の校舎

――これから力を入れて取り組んでいこうとしている活動はありますか?

特に力を入れていきたいのは異学年による集団活動です。コロナ禍が収束すれば、学年の垣根を越え、一緒に遊んだり給食を食べたりする「友の輪班活動」を再開させるつもりです。また、ここ2年間は実施できなかった「偕楽園」への遠足についても縦割りで再開したいと考えています。

それ以外では、人との関わりのなかで学びを得る活動にも積極的に取り組み、これから必要とされる“多様性を受け入れながら自分の考えを深めていく力”を高めていきたいですね。そのためには、自分の考えを持つこと・多様な考えに耳を傾けること・多様な考えのなかから深まった自分の考えを分かりやすく伝えるという3つの要素を大切にした授業の展開が求められます。

歴史の薫りが感じられる「水戸市立三の丸小学校」
歴史の薫りが感じられる「水戸市立三の丸小学校」

――2022(令和4)年4月に本校に着任された近重敦子校長先生にお話をうかがいます。着任されて感じることと、今後の意気込みを教えてください。

近重校長先生:隣の「水戸市立千波小学校」から赴任してきました。着任して数日ですが、きれいに整備されていて歴史ある地域に根付いた学校だな、と感じます。
子どもたちもマスク生活になって3年目。マスクの中の表情は見えづらいですが、中の表情もしっかり読み取って、マスクをしていても子どもたちが笑って過ごせるように、教職員と一緒に頑張ります。

2022(令和4)年4月に本校に着任された近重敦子校長先生
2022(令和4)年4月に本校に着任された近重敦子校長先生

――最後になりますが、水戸南町・三の丸エリアの魅力を聞かせてください。

大塚校長先生:本校のある三の丸エリアに関してですが、多数の教育関連施設があることに加え、文化、芸術、スポーツなどに触れ合い、かつ学べる環境が揃っています。自己の可能性を広げ、高めることのできる地域という意味では、とても意義深く、魅力的な地域ではないかと思います。

大塚 昌弘 校長先生(2022年3月まで同校校長)
大塚 昌弘 校長先生(2022年3月まで同校校長)
近重 敦子 校長先生(2022年4月~)
近重 敦子 校長先生(2022年4月~)

水戸市立三の丸小学校

所在地:茨城県水戸市三の丸1-6-51
電話番号:029-224-4533
URL:http://www.magokoro.ed.jp/sannomaru-e/index.html
大塚 昌弘 様 [2022(令和4)年3月まで同校校長]

近重 敦子 様 [2022(令和4)年4月より同校校長着任]

※この情報は2022(令和4)年4月時点のものです。

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