企業誘致や定住促進、イベント開催などを推進。中心市街地活性化に取り組む「水戸市産業経済部 商工課」
水戸黄門や「偕楽園」で有名な水戸市は、東京から北東に約100km。茨城県の県庁所在地である同市では、「水戸市中心市街地活性化基本計画」に基づく各施策が進められている。今回は水戸市産業経済部商工課の担当者の方に、同計画における基本方針や取り組み、定住人口を増やすため優良建築物等整備事業が行われている泉町の魅力などを伺った。
中心市街地の居住者は、公共交通機関の利便性や歴史・文化施設の充実度を評価
——「水戸市中心市街地活性化基本計画」について、概要や計画が立てられた背景についてもお教えください。
担当者:この計画は内閣府の認定を受けたもので、2016(平成28)年に第1期計画が策定されました。第1期は2022(令和4)年度末までで、現在は2023(令和5)年から2028(令和10)年までの5年間を計画期間とした第2期計画に移行しています。
商業をはじめとする、さまざまな都市機能のほか、歴史、芸術、文化的資源が集積する「まちの顔」である中心市街地は、社会情勢の変化により、まちなかの歩行者通行量が減少するなど、求心力が低下してきています。
多極的ネットワーク型コンパクトシティを目指す本市において、中心市街地の活性化は重要な課題であることから、本計画を策定し、各種施策を展開することとしております。
担当者:水戸市は車社会ということもあり、郊外に商業機能が分散したことで、相対的に中心市街地の売上高や人口集積率などが低下したのです。本計画はにぎわいの創出や居住の促進、事業所等の立地促進を進め、中心市街地の活性化を図ることを目標としております。
——令和4年に「水戸市中心市街地活性化基本計画策定に係るアンケート調査」を行われていました。市民、特に中心市街地の居住者からはどんな要望や期待がありましたか。
担当者:「中心市街地に不足していると思う施設」としては「食料品を買い物できるスーパーマーケット等」という回答が49.5%と最も多く、次いで「日用品当を買い物できる小売店」が24.4%となっています。そして「これから中心市街地がどのようなまちを目指すのが望ましいと考えるか」という問いには「日常生活に必要な食品や日用品を買える店舗が充実しているまち」が53.1%と最も多い結果となりました。
「中心市街地へ魅力を感じる理由」という問いには、「百貨店があって、買い物が楽しい」「バスなどの公共交通機関が充実しており、移動しやすい」「弘道館や大手門など、歴史に触れることができる環境がある」「図書館、博物館等の文化施設が充実している」といった意見が多くありました。また「中心市街地に住みたいと思う理由」としては「車を使わず歩いて生活できるから」が56.2%と最も多い結果となりました。公共交通機関の利便性や文化施設の充実度を重視する方にとっては、中心市街地は住みやすいのではないでしょうか。
泉町周辺の芸術振興、水戸駅周辺の歴史的景観の再生などに取り組む
——「MitoriO(ミトリオ)」の誕生をはじめ、すでに進んでいる取り組みもありますが、他に中心市街地活性化に対する取り組みがあればご紹介いただけますでしょうか。また、取り組みに対する反響などあればお聞かせください。
担当者:第2期計画の基本方針は3つあります。1つは「人々が訪れたくなる魅力づくり」で、メインとなるのが「水戸市民会館」と「水戸芸術館」、県内唯一の百貨店である「京成百貨店」から成る「MitoriO」を拠点とした取り組みです。本計画においては泉町周辺地区にある「MitoriO」を芸術文化の交流拠点と位置付けており、コンサートや大規模コンベンションの誘致などを進めるとともに、市や民間団体などによるイベント開催を積極的に行っています。
担当者:昨年7月に開館した「水戸市民会館」は大ホールの利用率も想定より高く、つい先日来場者100万人を達成しました。開会記念式典では野村萬斎氏出演の狂言、こけら落とし公演では人気デュオの「ゆず」さんのコンサートを実施しました。続くオープニングシリーズでも玉置浩二さん、さだまさしさん、長渕剛さん、EXILEのATSUSHIさん、GReeeeNなど、そうそうたる顔ぶれのコンサートを行い、大盛況でした。2,000席というホールの規模や充実した設備を整えたからこそ、こうした大物アーティストを呼ぶことが可能になりました。
また、子どもから高齢者まで、あらゆる市民が日常的に施設に立ち寄り、憩い、くつろぎ、楽しめる屋内広場や、学生等が気軽に利用できるラウンジギャラリーなどを配置しています。これにより、居心地の良いサードプレイスを市民に提供し、さまざまな世代が幅広い活動を通して相互に交流することができる施設となりました。
担当者:水戸藩第9代藩主徳川斉昭が開いた日本最大規模の藩校「弘道館」など歴史的資源が豊富な水戸城跡周辺では、歴史的景観の再生に取り組むとともにさまざまなイベントを開いて市内外から観光客を呼び込むなど、歴史の薫るまちづくりを進めています。
担当者:2つめの基本方針の「人々が暮らしたくなる快適空間づくり」では、多くの市民が集い、都市的な暮らしが楽しめるよう、まちなかの居住環境の整備を図ることにしています。
具体的な取り組みとして、居住人口を増やすためにマンションの整備促進を図りつつ、子育て世帯が住みやすいよう中心市街地への住み替えを行う際の住宅取得費の補助制度「子育てまちなか住宅取得事業」などを実施しています。
基本方針の3つめの「地域経済をけん引する活力づくり」では、これを実現するためオフィスの誘致や商業施設の立地促進を進めています。なお、空き店舗対策事業など、各種取組により、2014(平成26)年に22%だった空き店舗率は2022(令和4)年には16%と徐々に減ってきています。
水と緑が美しい公園や史跡も近い、芸術と文化が薫る水戸泉町エリア
——「水戸まちなかフェスティバル2024」では、多くの人が集まったと伺っております。こうした地域を巻き込んだイベントなど、中心市街地活性化を目的としたものが他にもあれば、教えてください。
担当者:おかげさまで「水戸まちなかフェスティバル2024」には市内外から約72,000人の方々に来場していただきました。中心市街地活性化を目的としたものとは限りませんが、結果的に活性化につながるイベントはいくつもあります。水戸最大のイベントである「黄門まつり」では中心市街地を会場として水戸ふるさと神輿渡御や水戸黄門提灯行列パレードを行っております。2016年から始まった「水戸黄門漫遊マラソン」は、南町をスタートして水戸市内をぐるっと回って三の丸でゴールというルートで、起点と終点が中心市街地になっています。また、「偕楽園」で行われる「水戸の梅まつり」も来場者が多いイベントです。
このほか、民間団体が主催するさまざまなイベントが中心市街地や千波湖畔で行われており、にぎわい創出に一役買っています。
——イベントやまちづくりに関して、「水戸市中心市街地活性化基本計画」のこれからの取り組みについて、お聞かせください。
担当者:先ほどお話しした取り組みを、今後も鋭意進めていく予定です。特に新しい取り組みとしては、昨年度から始めたシェアサイクル事業「みとちゃり」でしょうか。中心市街地を中心に市内22カ所にステーションを設け、気軽にレンタルと返却ができるようになっています。中心市街地内の移動はもちろん、「偕楽園」や「千波湖」周辺、「アダストリアみとアリーナ」などへの移動にも便利で、好評いただいています。
——最後に、水戸市泉町の魅力をお聞かせください。おすすめスポットなどもあればぜひご紹介ください。
担当者:水戸市泉町の一番の魅力は、やはり芸術・文化の拠点である「MitoriO」です。新しくできた市民会館が素晴らしいのは言うまでもありませんが、水戸芸術館も多彩で魅力あふれる事業を展開していますし、地域の文化活動の拠点として、市民と連携したさまざまな企画を実施しています。芸術館の中央にある芝生広場は実に気持ちのいい空間であり、市民の憩いの場にもなっています。この芝生広場で実施されるイベントなども大きな魅力だと思います。また、「泉町仲通り商店街」も面白いと思います。大工町とはまた少し違った趣があるレトロな飲み屋街みたいなところで、夕方になると提灯に灯りがともっていい雰囲気になります。
担当者:すぐ近くには、図書館や博物館もありますし、「子育て支援・多世代交流センターわんぱーく・みと」もあります。また、東に行けば「弘道館」や「水戸城大手門」などの歴史的建造物があり、西に行けば飲食店街があり、バスや徒歩で行ける距離に「千波公園」や「偕楽園」があって自然の中でくつろぐこともできます。「アダストリアみとアリーナ」も近いので、プロバスケットボールチーム「茨城ロボッツ」の試合も気軽に観戦にできるでしょう。千波湖に隣接する「茨城県近代美術館」もあり、いろんなものがそろった住みやすい環境だと思います。
担当者:先ほど中心市街地にはスーパーが少ないという話をしましたが、「MitoriO」には「京成百貨店」がありますし、隣の南町や大工町にもスーパーがあります。そして南町の知事公舎跡地には新しい店舗が建設中で、2024(令和6)年中に開業予定です。泉町からも近いので、お買い物の選択肢が増えるのではないでしょうか。

水戸市産業経済部 商工課
所在地:茨城県水戸市中央1-4-1
電話番号:029-232-9185
FAX番号:029-232-9232
URL:https://www.city.mito.ig.jp/soshiki/57/
※この情報は2024(令和6)年5月時点のものです。